歴史書で人間理解を深めた昭和の重工業王
日産自動車と日立製作所を立ち上げ、一代で三井や三菱といった旧財閥を凌駕する企業群を生み出した昭和の重工業王、鮎川義介は『十八史略』を愛読していました。
十八史略は中国の歴史をまとめた歴史書ですが、鮎川はそれを「人間理解を深める教材」と捉えていました。
十八史略は総勢4517人の人物が登場し、一人ひとりの性格や行動も異なるため、鮎川は「繰り返し読むことで人間理解が深まる」と考え、人に薦める際も「ただ古い歴史書を読むつもりで読んでも意味がない」と助言しました。
その傾倒ぶりは激しく、評論家の伊藤肇が「トインビーやドラッカーといった西洋の思想家を愛読している」と話した際、「そんなものより、十八史略でも読みはじめたらどうじゃ」と語り、森鴎外やツヴァイクの作品を「つまらんものを読んどるのう」と一蹴したという逸話が残っています。
古典だけが持つ素晴らしい力
十八史略は1300年代に書かれ、700年以上読まれてきた古典です。
数百年あるいは一千年といった時の試練に耐えた古典には、「書かれている知識や方法を参考にする」という通常の枠組みを超えた、人類に対する普遍的な影響力があります。
そして、そうした古典を鮎川のように愛読することは、人間観や世界観といった価値観そのものを揺るがし、読むことそのものが開運になるような深い読書体験をもたらします。
鮎川のように西洋思想や文学作品を嫌う必要はありませんが、「運を開き、ひとかどの人間になりたい」と望んでいるならば、『十八史略』に限らず『聖書』『老子』『スッタニパータ』といった古典から、どれか一つを選んで読むことをオススメします。