樋口一葉の書斎は一枚の障子でできていた
明治時代の女流作家である樋口一葉は、商店を営む狭い家の中に書斎を作り、そこで執筆しました。
その環境について、次のように日記に書き残しています。
「店は二厘三厘の客むらがり寄てここへもかしこへもと呼はる声、蝉の鳴たつにもたとへつべし。障子一重なる我部屋は、和漢の聖賢文墨の士来りあつまって仙境をなす」
樋口一葉の父親は、彼女が18歳のときに事業で失敗し、それから間もなく亡くなりました。
家業の失敗と一家の大黒柱の喪失によって家計が苦しくなる中、もともと歌人の中村歌子のもとで才能を発揮していた樋口一葉は、「文芸で身を立てて家計を助けたい」と考えました。
しかし、その思惑はうまくいかず、さらに借金が重なったことで東京の千代田区内幸町から台東区下谷に移り住み、現在の雑貨屋に相当する荒物屋を妹の邦子と開きました。
樋口一葉は早朝の仕入れを担当し、販売などは邦子に任せ、早朝以外の時間は書斎で執筆に勤しみました。
その自分の環境について、「店先はお客の声が蝉の鳴き声のように騒々しいが、それでも障子一枚を隔てた自分の書斎は、日本と中国の優れた作品があり、仙人が住むような俗界を離れた世界になっている」と書き残したのです。
「間仕切り」が開運になる理由
何かを始める際は、十分な環境を用意できない場合がほとんどです。
たとえば、スティーブ・ジョブズは、自宅のガレージからアップルを始めました。
現代の日本なら、「東京に引っ越して狭いワンルームからスタートする」という状況が考えられます。
そうした状況では、「障子」「屏風」「パーテーション」といった間仕切りを使うことが開運になります。
ワンルームでは、食事、睡眠、仕事、休憩のすべてをその部屋で済ませることになります。
しかし、眠るためのベッドが置かれた部屋で、仕事に集中するのは困難です。
ベッドが視界に入ると、どうしても仕事の合間に横になりたくなります。
こうした誘惑を減らしてくれるのが、間仕切りです。
ベッドと机の間に間仕切りを一つ置くだけで、精神的な切り替えがしやすくなります。
小さなことから始めよう
もちろん理想を言えば、寝室とリビングとダイニングと仕事部屋が分かれている2LDK以上の家に住んだり、自宅とは別に仕事用の事務所を借りたりできるといいのかもしれません。
しかし、スタートしたばかりの頃は、そこまでの余裕はないはずです。
だからこそ、「間仕切りを置く」といった小さな工夫が、大事な開運のコツになります。