強く思えることが願望実現の出発点になる

京セラを創業した稲盛和夫は、創業して数年目の時期に京都の経営者向け講演会で、松下幸之助の話を聞きました。ダムに水を貯めるように、企業も資金・人材・設備などに余裕を持つ「ダム式経営」が必要だと松下が説くと、一人の経営者が、「余裕がある会社だからダム式経営ができるのであって、余裕のないわれわれはどうすればダムをつくれるのか」と質問しました。

松下はしばらく考えた末、「そうですなあ、簡単には答えられませんが、やっぱり、まず大事なのはダム式経営をやろうと思うことでしょうな」と答えました。具体的な方法論を期待していた会場からは失笑やざわめきが起きましたが、稲盛はこの答えに強烈な衝撃を受けたといいます。

「“できる、できない”ではなしに、まず、“こうでありたい。おれは経営をこうしよう”という強い願望を胸にもつことが大切だ、そのことを松下さんは言っておられるんだ。そう感じたとき、非常に感動しましてね」と稲盛は松下と対談した際に振り返っています。

「思えること」は願望実現において最も重要な要素です。「こうなりたい」と強く思っている人は、願望実現について詳しく勉強しなくても、自分の願いを叶えていきます。反対に心の底から強く「こうなりたい」と思えなければ、どんな方法を学んでも、なかなか実現しません。この状態に心当たりのある人は多いと思います。

仕事や恋愛や生活について、誰でも「こうなりたい」と思っています。しかし、ただ思っているのではなく、強く思っているかというと話は別です。大抵の場合は「できれば、こうなりたい」「できれば、そうしたい」と付け足してしまいます。こうした言葉の端々に現れる「自分の願望の強度」に目を向けると、それが新たな課題になり、それまでと異なる取り組みができるようになります。